橘玲氏の作品は複雑な世の中の事象を大胆かつ納得感のある切り口で表現する痛快さに魅力があります。
身も蓋もない言説から大っぴらには公言できないものの、実は隠れファンがかなり多いのではないでしょうか。
この記事では橘作品のおすすめ本を紹介します。
橘作品の特徴や代表的な著作をざっくり理解できますので、ぜひ次の本選びの参考にしてください。
また今回紹介している作品の多くはAmazonが提供するオーディオブックサービス、Audible(オーディブル)の読み放題サービスでも聴くことができます。
オーディオブックは実際に聞いてみると予想以上に頭に入ってきますし、運動中や移動中も楽しめるので、読書によるインプット量が体感的には2倍以上増えます。
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目次
橘玲氏のプロフィール
早稲田大学を卒業後、新卒で小さな出版社でキャリアをスタートしています。その後に同僚や友人と編集プロダクションを経て宝島社に入社。「宝島30」の編集長を務める等活躍した後、2002年に小説「マネーロンダリング」で作家としてデビューしています。
橘氏の会社員時代のエピソードは「80’s エイティーズ ある80年代の物語」で詳しく描かれていおり、同氏の原体験に触れることができます。
フィクション編
まずは魅力的な登場人物達と練り込まれたストーリーであっという間に読み切ってしまうフィクション作品のおすすめです。
マネーロンダリング
橘先生のデビュー作です。
小説派好きで橘作品が初めてという方はまずはこの作品から読んでみて自分との相性を見極めてみると良いと思います。
消えた50億円の大金をめぐり、元銀行員でファイナンシャルアドバイザーとして香港で生活している主人公の秋生、依頼人として現れた謎めいた美女の麗子、消えた大金を追い求め秋生に接近するヤクザの黒木等を中心にストーリーが展開されています。
主人公が明晰な頭脳で一つ一つ謎を紐解き、真実に近づいていく様はまるで推理小説のようです。
日本と香港を舞台に物語が繰り広げられており、本筋のストーリーもとても面白いんですが、何気なく書かれている香港金融の歴史や具体的な口座開設の手続き、当時の税制についても興味深く読むことができます。
香港での生活や代表的な建造物等の描写も印象的で、一度旅行してみたくなります。
※余談ですが本書内で度々言及される映画「恋する惑星」も古い映画ですがとても面白いです。
永遠の旅行者
永遠の旅行者 完結上下巻セット 【電子版限定】 タックスヘイヴン
永遠の旅行者とはPT(Perpetual Traveler)の日本語訳で、どの国の居住者にもならず、合法的に一切の納税義務から解放された人のことをいいます。
ハワイを中心に「永遠の旅行者」として生活している元弁護士の恭一が謎めいた富豪の麻生という老人から”日本国に1円の税金も納めずに孫娘に財産のすべてを相続したい”というとんでもなく無茶な依頼を受けるところから物語が展開されていきます。
戦後シベリア抑留兵やハワイの日系移民の話、日米両国の税制の違い、大手弁護士法人での業務内容等々、、知的好奇心をそそるテーマがふんだんに盛り込まれています。
今作ではハワイと熱海が主要な舞台となっています。
のんびりとした環境への憧れが強くなってしまい、仕事へのモチベーション的にはマイナスになってしまうかもしれません(笑)
ちなみに前作「マネーロンダリング」に登場するマコトのホームページについての描写があり、共通の世界観であることが暗示されています。
タックスヘイブン
・外資系銀行で働いたのち、フリーのプライベートバンカーとして仕事をしている古波藏
・古波藏の高校の同級生で大手電機メーカーを退職後フリーの翻訳者として働いている牧島
・同じく古波藏、牧島の高校の同級生の(桐依)紫帆
この3名が主要登場人物となります。
紫帆の夫で有名なファンドマネージャーの北川がシンガポールのホテルで転落死するという事件が発生するところからスタートし、北川が運用していた1000億円もの大金をめぐり大物政治家やヤクザ、特捜、スイスのプライベートバンク等様々な勢力が入り乱れるという形で展開されていきます。
ストーリーの大枠や海外文化についての情報等、読み味としては上述の「マネーロンダリング」に似ていますが、今回は3人の登場人物による三角関係的なロマンス要素も加わり、さらにレベルアップした印象です。
また、今回はシンガポールが舞台になり、前述の2作品と同様その土地の歴史や雰囲気、代表的な建造物等について多くの描写があり、この部分だけでも十分に楽しめます。
タイトルの通りタックスヘイブンと呼ばれる租税回避地についてはもちろんですが、プライベートバンクや華僑ネットワークやODA等々、橘先生の知見の広さや取材力に驚かされます。
ちなみに本作には永遠の旅行者に登場する堀山という人物が再登場します。
これで「マネーロンダリング」「永遠の旅行者」「タックスヘイブン」の全てで繋がりができました。
本筋には全然関係ありませんがこの辺もシリーズのファンからするとちょっとうれしいですね。
ノンフィクション編
個人的にはフィクションも大好きなのですが、ノンフィクションから橘ファンになった人の方が全体的には多い印象です。
橘イズムのコアな部分に触れることができる作品が多いことがその理由かなと思います。
新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ
新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)
効率的な資産運用と人生設計について、橘氏の考えを網羅的にまとめた本になります。
- 収入を増やす
- 支出を減らす
- 運用利回りを上げる
この3つが資産を増やす普遍の法則で、それぞれの効果を最大化するための様々な示唆を与えてくれます。
まさに人生設計をハックする、という趣の本で読み進めていく度にわくわくする内容です。
全体を通じて、経済的自立のためには制度のゆがみから生じる恩恵を獲得していくことが重要で、従来当たり前とされてきた資産形成手段に疑問を呈し、工夫する余地が多くあることを説いています。
橘先生のその他の人生設計系の本はこの作品を起点により詳細部分を記載していることが多く、まずははこの本を読み、関心のある領域の本を読んでいくと良いと思います。
幸福の「資本」論—あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」
この本では「幸福」を筆者なりの解釈で言語化し、その土台となる3つの資本(金融資本、人的資本、社会資本)を最大化させていくことの重要性が書かれています。
なんだそんなことか、と思われるかもしれないですが、その一つ一つの資本に対して非常に深く考察されており、多くの人にとって学びとなる情報が詰め込まれています。
また、それぞれの資本のバランスから8つの人生パターンを提示しており、自分はどのような人生を送りたいのかを考えるきっかけとなります。
2億円と専業主婦
こちらは2017年に出版された「専業主婦は2億円損をする」という本をリメイクされたものになります。
なかなかパンチの効いたタイトルですが、前述の幸福の資本論の女性バージョン、という感じの趣で共働きをすることの経済的合理性について説明されている内容になります。
共働きの合理性を説いた後には、実現に当たっての弊害となるであろうポイント(家事、育児等)への対処法についても述べられており、様々な観点で夫婦で経済的合理性を追求するための示唆を与えてくれます。
裏道を行け ディストピア世界をHACKする
裏道を行け ディストピア世界をHACKする (講談社現代新書)
「持ってる人」と「持たざる人」の格差が急激に拡大する現代の社会で、恋愛や金融や人体等々、
様々な領域をハックする人たちを描いた作品です。
「FIRE(経済的独立と早期退職)」や「ミニマリスト」を志向する人達が近年急増している社会的な背景や彼らの思想がとても分かりやすく整理されており、筆者の述べるディストピアの世界で自分はどう生きたいのか、自分自身を見つめることができる良作でした。
おわりに
橘作品は合理性を追求した切り口から、好き嫌いが分かれる作家の一人ですが、この価値観に触れることで、これまでとは違った世界の捉え方ができるんじゃないかと思います。
まさに読書の醍醐味ですよね。
気になる本があればぜひ手に取ってみてください。
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