「業界研究したいけど業界地図を読んでもまったく頭に入ってこない」
「どんな会社かは分かるけど具体的な働き方はいまいちピントこない、、」
そんなあなたに朗報です!
経済を軸にストーリー展開をする経済小説であれば、楽しく読みつつ、いつのまにか自分の知らない業界で働くイメージや基礎知識を得られることができます。
まさに一石二鳥!
ということで今回は個人的におすすめの経済小説を業界別で紹介します。
目次
<商社業界>『毎日が日曜日』城山三郎
発売日が1979年とかなり古い小説ですが、数々の名作を生み出している城山三郎先生による商社を題材にした作品です。
ダイナミックに世界を股にかける華やかな仕事や多忙な中で崩れてしまう家族との関係等をリアルに描いています。
比較的ネガティブな視点が多い作品ですが、長い会社員生活をどう過ごすことが幸せなのか、、考えさせてくれる内容です。
また、この作品の登場人物たちの数十年前にあたるストーリーが同先生の短編集「総会屋錦城」の中の1つ「輸出」の中で描かれています。
※作家の黒木亮先生は作家としてデビューするにあたってこの「輸出」のストーリー構成等を要素分解して文章修行を行ったと自身のエッセイ集「世界をこの目で」の中で述べています。
こちらも併せて読んでみるとより本作品を楽しめますよ。
<アパレル業界①>『アパレル興亡』黒木亮
2020年に発行された黒木亮作品の中でも比較的新しいもので、金融業界を舞台にした同氏作品の中で珍しく、
大手婦人服メーカーの拡大とバブル後の衰退のストーリーを描いてます。
一つの企業をテーマにした作品ではあるものの、本作品で戦後アパレル業界全体の大きな流れを理解することができます。
ストーリー上の舞台となる「オリエント・レディ」は架空のですが、かつての上場企業で大きな存在感があったアパレル企業「東京スタイル」がモデルとされているといいます。
ちなみにこの東京スタイルの経営については2000年代に経済界で活躍した村上世彰による著書「生涯投資家」でもかなり詳細に描かれております。「上場企業のあるべき姿」という側面から村上氏は同企業に対してかなり批判的で、両作品を読むことでより多面的な視点を得ることができます。
<アパレル業界②>『ランウェイ』幸田真音
ランウェイ (上) (角川文庫)
外資系金融機関で勤務した後に小説家に転身された幸田真音先生による作品です。
アパレルのショップ店員をしていた主人公が夢であったバイヤーの仕事を得ることができ、様々な困難と闘いながら奮闘していく女性のサクセスストーリーです。
明日も頑張ろう、と感じさせてくれる読後感がさわやかな小説です。
<自動車業界①>『トヨトミの野望』梶山三郎
経済記者の覆面作家、梶山三郎先生による大手自動車メーカーをモデルにしている話題作です。
カリスマ性のある社長がアメリカ市場に打って出て会社を大きく成長させつつ、創業一族であるの豊臣家と対立していく様子が描かれています。
グループ会社を巻き込んだ社内政治や実際に起きる事件がとても生々しく、どこまでが本当の出来事でどこがフィクションなのか気になってしょうがないことがたくさんあります。
<自動車業界①>『トヨトミの逆襲』梶山三郎
トヨトミの逆襲 (小学館文庫)
トヨトミの野望の続編になります。
2016年以降を舞台としており、EV(電気自動車)シフトが従来のサプライヤーにどのような影響を与えるのか、自動運転技術やライドシェアの普及により起こる変化等々、最新のテーマについてふんだんに触れられており、業界全体のトレンドがよく理解できます。
従来の自動車メーカーが今後どのような方向性を向いていくべきなのか考えさせられる内容です。
両作品に共通して言えることですが、社内政治のミクロな部分と業界全体のマクロな部分への描写のバランスが素晴らしい上に、終盤にかけてヒートアップしていくストーリーは読みごたえ満載です。
<エネルギー業界>『マグマ』真山仁
「ハゲタカ」シリーズで有名な真山仁先生による地熱エネルギー発電をテーマにした作品です。大手投資銀行で働いている主人公が地熱発電の会社の事業再生担当として働くことになり、再生エネルギーを取り巻く規制に苦しみながら、奮闘していきます。
真山先生らしい読みやすくエンターテイメント性の高いストーリーに加え、地熱発電の可能性や課題を良く理解できる作品になります。
尚、本作品の主人公、野上妙子はハゲタカシリーズの「シンドローム」でもちょっとだけ登場します。
こういうちょっとした別作品とのつながりって両作品を読んだ人にとってはとしてうれしいですよね笑
<マスコミ業界>『小説 新聞社販売局』幸田泉
全国紙で記者として働いていた経験を持つ幸田泉先生による作品です。
新聞社で花形と言われる記者の仕事をしていた主人公が販売店からの売り上げ拡大を担当する販売局という部署に左遷されるところから物語が始まります。
昨今は昔程の勢いはないと言われている新聞社ですがその構造的な問題や闇の部分に鋭く切り込んでいる作品です。
異業界の人にはわかりづらい専門用語なども丁寧に解説されており、とても理解しやすいです。
おわりに
いかがでしたか?
実は経済小説で一番多いのは金融業界をテーマにした作品なのですが、こちらは名作が多すぎるのでまた別にまとめます。
あくまでそれぞれの業界について、著者が取材した観点での話なので、本を読んだことを入り口に自分自身で理解を深められるといいですね。
ちなみに、今回紹介した作品で「生涯投資家」はオーディオブック「audible」の読み放題でも読むことができます。
無料トライアルもあるのでこの機会にトライしてみるのもありだと思いますよ。
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